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ケニアにおける稲作の現状

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ケニアにおける稲作の現状

コメ増産の必要性

サブサハラアフリカの多くの国では、1990年代以降、都市部を中心にコメの消費量が急増しています。しかし、需要増加に対して国内生産が追いついておらず、約700万トン(FAO、2003)の需給ギャップが生じています。サブサハラアフリカ全体のコメの自給率は、およそ50%程度にとどまっており、多くの国では、コメの輸入に多額の外貨が使われています。また、昨今の世界的な穀物価格の上昇により、貧困層を中心に食糧不安が引き起こされています。今後も都市化の進展に伴い、他の穀物に比べて、調理が比較的簡単で、栄養価に富み、食味の良いコメの消費はさらに伸びていくことが予想されるため、コメの増産はサブサハラアフリカの食糧安全保障にとって重要な課題となっています。
本研究の対象国であるケニアのコメ生産量は、1980年以降徐々に増加してきたものの、現在でも年5万トン前後にとどまっています。それに対して1990年以降の消費量の増加は急激で、今では輸入量が年30万トンを超えており、自国での増産が急務となっています。

稲作地域とコメ生産性

ケニアにおけるコメ生産の約80%は、主にケニア政府によって整備された灌漑水田で行われています。
主な灌漑水田としては、最大規模のムエア灌漑地区(約6447ha)、アヘロ灌漑地区(約877ha)、ウェスト・カノ灌漑地区(約900ha)、ブニャラ灌漑地区(約213ha)などがあげられます。これらの灌漑地区は、国立灌漑公社(National Irrigation Board: NIB)によって維持管理されています。NIBによって管理されている灌漑地区では、各農家に4エーカー(約1.6ヘクタール)の水田が割り当てられています。
その他、小規模な灌漑水田、天水田、谷地田などで水稲が栽培されているほか、陸稲の栽培も小規模ながら行われています。

ケニアにおけるイネの単収は、灌漑水田で約4.7t/ha、天水田で約2.8t/ha、天水畑で2.7t/haとなっています(MoA 2009)。灌漑水田の割合が高いため、全国平均でも4.1t/haの高収量を達成しています。

稲作振興に係わる我が国の国際協力

日本政府は2008年5月に横浜で開催された第4回アフリカ開発会議(TICAD Ⅳ)において、サブサハラアフリカのコメ生産を2018年までの10年間で1400万トン(2008年現在)から2800万トンに倍増するための支援を行うことを表明しました。
これを受けて、国際協力機構(JICA)は、アフリカ緑の革命のための同盟(Alliance for a Green Revolution in Africa: AGRA)と共同で「アフリカ稲作振興のための共同体(Coalition for African Rice Development: CARD)」を設立し、対象国第1グループ12カ国、第2グループ11カ国、計23カ国に対してコメ増産のための協力を行っています。
ケニアは、CARDの支援対象国第1グループに入っており、2008年に作成された「国家稲作振興戦略(National Rice Development Strategy: NRDS)」に基づき、国を挙げてコメ増産に取り組んでいます。また、稲作振興を進めるため、農業省に国家稲開発戦略技術委員会(National Rice Development Strategy and Technical Committee)が設置されています。JICAは、農業省に稲作の専門家を派遣して、ケニアの稲作振興を支援しています。