ネリカ(New Rice for Africa)の可能性
ネリカ(NERICA)とは
イネには、私たちが主食にしているアジア起源のOryza Sativa L.(アジア稲)の他に、アフリカ起源のOryza glaberrima Steud.(アフリカ稲)があります。
アフリカ稲は、西アフリカで3500年以上前に栽培化されたと考えられています。
現在では、主にニジェール川流域に形成された広大な内陸デルタの氾濫原で栽培されています。
ネリカ(NERICA)とはNew Rice for Africaの頭文字を合わせた造語で、1996年に西アフリカ稲開発協会(現アフリカ稲センター)のモンティ・ジョーンズ博士によって、当時非常に困難であると考えられていたアジア稲と西アフリカ起源のアフリカ稲との種間交雑によって育成されたイネ品種群の総称です。
2011年8月現在、陸稲品種NERICA1~18および水稲品種NERICA-L1~60が公開されています。
ネリカの特徴
ネリカは、アジア稲の多収性とアフリカ稲の生物的・非生物的ストレス耐性とを併せ持つ、従来のイネ品種を凌駕する優良品種群で、アフリカの食糧問題解決に役立つ作物として注目されています。
ネリカは、収量性、耐乾性、耐塩性等個々の形質を抽出して比較すると、特に優れているとは言えませんが、いくつかの優れた特徴を持っています。
現在普及しているネリカは主に陸稲品種ですが、陸稲は水田を造成しなくても栽培が可能であるため、アフリカの一般的な農民にとって導入が容易です。
また、ネリカは播種後90~100日前後で成熟する早生品種であるため、短い雨季が終わり旱ばつの被害を受ける前に収穫することが可能です。
そして、ネリカと同程度の早生品種でネリカよりも多収の陸稲品種は、ほとんど見当たりません。
すなわち、ネリカの優位性は、陸稲、早生、多収性(但し、条件による)という特性を併せ持っていることにあると考えられます。
ネリカは、雨季が短く灌漑の整備されていないサブサハラ・アフリカ畑作地域において、干ばつを避けつつ、できるだけ高い収量を得るのに適したイネであるため、西アフリカではギニアを中心に普及が進んでおり、東アフリカでもウガンダを中心に栽培面積が拡大しつつあります。