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研究活動

アフリカのイネ生産性向上に向けた栽培学的研究:槇原 大悟

槇原 大悟

アフリカのサハラ砂漠より南(サブサハラアフリカ)にある多くの国では、コメの需要増加に対して国内生産が追いついておらず、コメの増産が食糧安全保障上の重要課題となっています。アフリカにおけるコメ増産に貢献するため、実践アフリカ開発研究室では、ケニアを拠点として、現地の研究者と共同研究を行っています。

アフリカ大陸東岸、赤道直下に位置するケニアには、海岸沿いの低地から標高約1400mの高地にかけて稲作地帯が点在しています。これらの異なる栽培環境下において、天水低湿地における在来農法による粗放的な稲作、整備された灌漑水田における近代農法による稲作、新たに導入された陸稲ネリカの栽培など多様な稲作が行われています。ケニアは日射が強く、イネの潜在生産力が11 t ha−1以上と極めて高いものの、潜在生産力と実際の収量との差(収量ギャップ)が大きいことが指摘されています(Global Yield Gap Atlas)。このことの主な要因として、旱ばつ、高地で起こる冷害、塩害、土壌の低肥沃度、いもち病、イネ黄斑病など様々な生物的・非生物的ストレスによりイネの生育が阻害されていること、およびイネ品種と栽培環境に適した基本栽培技術が十分に確立していないことが挙げられます。
様々な生産阻害要因を克服し、稲作の安定化と生産性向上を実現することは、ケニアの農業における最重要課題の一つです。近年では、ストレス耐性や作物生産性に関わる様々な形質とそれらに関与する量的遺伝子座(QTL:Quantitative Trait Locus)が明らかにされ、有用なQTLをテーラーメードで導入した品種を開発することが技術的に可能となっています。しかし、実際に圃場で発現するストレス耐性や生産性は、品種のもつ遺伝的要因だけで決まるわけではなく、栽培環境と栽培管理による影響を受けて変化します。実践アフリカ開発研究室では、日本における人工環境下での栽培試験とケニアにおける現地栽培試験によるG (遺伝子型) ×E (環境条件) ×M (栽培管理) の相互作用の解析を通して、ケニアの栽培環境下で機能するQTLの特定および導入したQTLの機能が有効に働くための条件の解明に取り組んでいます。その上で、現地の栽培環境に適した品種の開発を進めるとともに、イネ品種の能力を十分に発現させる栽培技術を開発し、ケニアの稲作の安定化と生産性向上の実現を目指しています。

また、これまでの研究活動を通して整備してきたケニア農畜産業研究機構ムエア支所(Kenya Agricultural and Livestock Research Organization, Mwea Centre)をアフリカにおけるイネ研究の拠点として機能させ、国内外の研究機関との連携によるネットワークを構築することにより、複数国の多環境での連絡栽培試験を実施し、各国の多様なニーズに応じたイネ品種と栽培技術の開発に貢献するプロジェクトを実施しています。


冷害を受けたイネの穂(ケニア・ムエア灌漑地区)

圃場における調査の様子(ケニア・ムエア灌漑地区)

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