イベント情報
2012年度第3回オープンセミナー
"ネリカの穂ばらみ期耐冷性に関するQTL解析および有望系統の選抜"
更新日:2018年07月09日
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開催報告
農学国際教育協力研究センター(ICCAE)は、2012年5月から11月までの任期でICCAE外国人客員研究員を務めるジョン・キマニ博士(ケニア国立農業研究所上席研究員)を講師として迎え、第3回オープンセミナーを10月17日(水)に開催しました。キマニ氏は、「ネリカの穂ばらみ期耐冷性に関するQTL解析および有望系統の選抜」と題して、同氏がICCAE在任中に取り組んだ研究の成果を中心に報告しました。
東アフリカにあるケニアでは、国内消費量が急増しているコメの増産が重要課題となっています。イネの栽培面積拡大が期待されているケニアの高地では、雨季後半の気温低下によって不稔籾が発生する障害型冷害が問題となっています。
キマニ氏は、ケニアで普及が進められているネリカ品種やケニアのイネ品種など約30品種の耐冷性を評価し、極強に分類されたNERICA1から極弱に分類されたNERICA16まで大きな変異があることを報告しました。耐冷性程度の異なるこれらの品種は、耐冷性イネ品種の開発に必要不可欠な耐冷性評価用基準品種として利用可能であることを示しました。また、日本の耐冷性品種“はなの舞”とネリカの親品種である“WAB56-104”との交配後代系統を用いて、それぞれの品種に由来する耐冷性関連QTLを両方とも持つ系統の耐冷性が強く、これらが耐冷性育種素材として有望であることを示しました。さらに、ケニア向け耐冷性品種の開発に向け、新たに熱帯ジャポニカ型や日本型の耐冷性品種とケニアのイネ品種を交配したことを報告しました。
これらの報告を受け、低温障害発生メカニズムやケニアにおける耐冷性イネ育種の進め方について活発な意見交換が行われ、盛況のうちに終了しました。
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概要
開催日時 |
2012年10月17日(水)15:30 - 17:00 |
開催場所 |
名古屋大学農学部第2講義室 |
講演者 |
John Munji KIMANI (ケニア国立農業研究所ムエア・テベレ支所上席研究員/ ICCAE 客員研究員) |
言語 |
英語 |
イネは、トウモロコシ、コムギに次いで、ケニアで3番目に重要な穀物であるが、その生産性は低く、80%以上を輸入に頼っている。生産性を阻害する主な要因として、高地で発生する冷害、いもち病、土壌の低肥沃度などがあるが、これらの課題に対応した品種の開発は遅れている。耐冷性品種を導入することによって、イネの栽培面積を大きく増加することができると考えられる。ICCAE とKARI は共同で、ネリカの親品種であるWAB56-104と強耐冷性の水稲品種はなの舞の交雑後代系統を用いて、遺伝子マーカー選抜と圃場でのフェノタイピングによる耐冷性品種の開発に取り組んでいる。
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