イベント情報
2012年度第4回オープンセミナー "水田の硝化作用とイネの硝酸窒素栄養の可能性について"
更新日:2018年07月09日
20121119180600
開催報告
国際農林水産業研究センター(JIRCAS)の鳥山和伸氏によるオープンセミナー「水田の硝化作用とイネの硝酸窒素栄養の可能性について」が、11月19日、農学部で行われました。イネはアンモニアを好み、これまでアンモニア栄養を中心として水稲の多収技術が確立されてきました。一方、1983年にマダガスカルで始まったSystem of Rice Intensification (SRI) (稲作強化技術)が次第に東南アジアやアフリカ等に広がってきています。SRIは、播種後1週間から10日前後の稚苗を水田に疎植して分けつを促進し多収を実現すると言われている技術ですが、その増収の仕組みがまだ科学的に検証されていないことが問題となっています。
鳥山氏は、アンモニア+硝酸で栽培したイネの生育量がアンモニアだけの場合より増加することに注目し、普通の水田のように湛水しないで、間断潅漑によって水位調節を行い、土壌を酸化的条件にコントロールできるSRI圃場の土壌では、微生物の働きによっておこる硝化作用によってアンモニアから生成される硝酸が効いているのでないかという仮説をたてて研究しています。このように、イネの根の周囲の土壌から根面まで酸化的条件であればイネが硝酸を吸収することが起こりうるのです。
硝酸でイネを育てることができれば、生育が促進され収量が増加することが期待されます。その仕組みの解明はまだですのでそれも含め、この仮説の検証には土壌肥料や作物生理、分子生理学などの異なる研究分野のさらなる研究が必要ですが、将来に夢を与える研究と言えます。セミナー参加者もこの点に注目して議論が深まりました。
ページ先頭へ戻る
概要
開催日時 |
2012年11月19日(月)15:30-17:00 |
開催場所 |
名古屋大学農学部第7講義室 |
講演者 |
鳥山 和伸 (国際農林水産業研究センター 生産環境・畜産領域長) |
言語 |
英語 |
水田土壌での硝酸化成作用は湛水土壌表層や酸素が供給される水稲根圏等の好気的部位で生じるが、その後土壌の還元部位での脱窒作用を伴うことから窒素損失に結びつき、水稲生産にはマイナスであると考えられてきた。一方、水稲は好アンモニア植物とされているが、水耕で窒素源を硝酸とアンモニアに設定するとアンモニア単独とするよりも乾物生産が向上する。そこで、圃場での水稲生産において硝酸態窒素のプラス効果を発揮させる条件を検索している。セミナーでは、公表された硝酸窒素栄養の生理的データをもとに構築した仮説について報告する。
« オープンセミナー一覧へ戻る