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研究概要

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目的

▲農家によるネリカ試験栽培

東アフリカでは、標高800~1500メートルの高原地帯にコメの高収量が期待できる広大な農耕適地が広がっています。
一方、標高の低い地域は、海岸沿いの一部の地域や河川流域の灌漑地域を除き、降水量が少ないため、作物生産にはあまり適していません。
ケニアのコメ増産を図るためには、降水量の比較的多い高原地帯における稲作振興が極めて重要です。
東アフリカの高原地帯においては、トウモロコシなどの穀類と豆類との混作が広く行われており、天水畑地への陸稲の導入が容易であると考えられます。
とくに陸稲ネリカは、東アフリカのコメ増産に役立つ作物として注目されています。
これに加えて、未利用の天水低湿地も多く残されており、小規模灌漑による水稲栽培の普及も大きな可能性を持っています。これらの地域における稲作の普及は、今のところ限定的であり、栽培面積拡大の余地が大きく残されています。

▲天水低湿地での稲作

稲作がまだ広く普及していない東アフリカにおいて稲作普及活動を効果的かつ持続的に進めるためには、稲作振興に向けた緊急に解決すべき基盤的課題を特定し、解決に向けた取り組みを進めることが重要です。
そこで本研究では、栽培学、作物生理学、作物育種学、土壌学、農業経済学、リモートセンシングの分野における実績があり、アフリカの農業を熟知した自然科学と社会科学の研究者を含む学際的国際共同研究チームを組織し、コメ増産の必要性が増している東アフリカのケニアを主な対象国として、地理情報システム(GIS)を利用した稲作可能地域分級地図の作成とコメ生産ポテンシャルの評価、稲作普及のための社会経済的条件の解明、ならびにイネの生育阻害要因の検証と対処方策の開発に取り組みます。また、本研究を通して、東アフリカで不足しているイネ研究者の育成を行うことも重要な目的です。

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対象とする主な生育阻害要因

ケニアの高原地帯における作物生産は、不安定な降雨パターンと不十分な灌漑施設のため、旱ばつの危険にさらされています。また、標高1100メートルを超える高原地帯では、大雨季の後半から乾季の始め(7~8月)に夜温が13~18℃程度まで低下することがあり、低温による不稔籾の発生(障害型冷害)が問題となっています。さらに、ケニア最大の灌漑水田地区であるムエアでは、2007年以降、いもち病の多発が大きな問題となっています。本研究では、東アフリカ高原地帯における主な生育阻害要因として、旱ばつ、冷害、いもち病に着目し、現地の栽培環境に適したイネ品種が持つべき具体的形質を明らかにするとともに、抵抗性品種作出のための育種素材を整備し、栽培技術開発の方向性を検討します。

▲干ばつ

▲冷害

▲いもち病


研究目的

東アフリカの稲作振興に向けた、緊急に解決すべき基盤的課題の特定と、その解決策の提案

研究内容

  1. 地理情報システム(GIS)による稲作可能地域の特定とコメ生産ポテンシャルの評価
  2. 冷害、旱ばつ、いもち病等に対するイネ品種の抵抗性の評価
  3. イネ品種の現地の栽培環境に適した形質の解明(主に耐旱性と耐冷性)
  4. イネ育種素材の育成と育種戦略の構築(主に耐冷性といもち病抵抗性)
  5. 現地に適した栽培技術の開発
  6. 陸稲普及条件の解明と普及方策の提示

プロジェクト終了後

研究成果を稲作振興のための技術協力等に活用