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研究内容

本研究は、東アフリカにおける稲作振興に向けた緊急に解決すべき基盤的課題を特定し、その解決の方向性を明らかにすることを目的とし、以下に示した3つのサブテーマで構成されています。各サブテーマの研究内容を以下に紹介します。

▲マセノ大学圃場での栽培実験の様子

▲愛知県農業総合試験場
山間農業研究所の耐冷性検定圃場

▲ケニア沿岸地域の農民によるネリカ栽培

(1)稲作振興に関する栽培・育種学的研究

本サブテーマでは、東アフリカにおける稲作普及を阻害している要因として、主に旱ばつ、冷害、いもち病に着目し、以下の研究に取り組んでいます。

① 生育阻害要因の解明と対策の方向性提示

ケニアにおける主要なイネの生育阻害要因である旱ばつ、冷害、いもち病の発生様態を分析するとともに、これらの生物的・非生物的ストレスに対するイネ品種の抵抗性を評価し、遺伝子型と環境要因の相互作用を明らかにします。その上で、現地の栽培環境に適したイネ品種の開発にとって重要な具体的形質を栽培環境毎に整理します。

② 有用遺伝子座を持つ育種素材の整備と育種戦略の構築

品種特性評価ならびに有望イネ品種間の交雑後代系統を用いたバイオアッセイおよび遺伝子解析に基づき、現地環境に適した有用遺伝子座を持つ育種素材を整理し、現地適応品種育成に向けた育種戦略を構築します。

③ 生育阻害要因克服に向けた栽培技術対策の提案

ケニアにおけるイネの生育阻害要因克服のための方策を栽培学的見地から検証し、現地の自然・社会環境に即した栽培技術の確立に向けた方向性を示します。

(2)稲作普及のための社会経済的条件の解明

ケニアにおいて陸稲ネリカの栽培が普及する可能性のある地域を特定し、村落調査および農家家計調査により当該地域の農業技術および生活様式の現状を明かにします。また、陸稲ネリカ種子の農家への配布、対象農家のモニター調査および年度毎の農家家計調査を行い、ネリカ栽培の農家家計に対するインパクトを評価します。さらに、調査により得られたデータの分析結果および補足的なインタビューにより、稲作導入の可能性、条件および課題について技術的、社会経済的、文化的観点から考察し、効果的な陸稲普及方策を提示します。

(3)稲作可能地域の特定とコメ生産ポテンシャルの評価

ケニアを中心に東アフリカ高原地帯の気象データ、土地利用データ、稲作に関するデータ、衛星データ、標高データ、土壌データ等を収集し、稲作の状況や土地利用状況に関する現地調査を行います。地理情報システム(GIS)を利用して、高精度の稲作可能地分級図を作成し、推定された稲作可能地域の面積から稲作振興のインパクトを推定します。また、品種や栽培技術の改良により、稲作可能地域の面積や収量レベルがどのように変化するかを推定、評価する手法を確立し、その手法をもとに面的な分布を推定します。